先日、今井凌雪生誕百周年記念展に足を運んだ。

「書は、あきない」
俳優の緒形拳さんが、「真鶴の巨人」と称した中川一政氏のことば
「書は、観ていてあきない」
映画監督として活躍された黒澤明氏のことば
その日は、とても寒い一日だったはずなのに、心が満たされたせいか、帰り道は、ぽかぽかして感じられた。
書を楽しみ、戯れ、生涯書き続けた今井凌雪先生の偉業を、改めて、確認する日でもあった。
今井凌雪先生から、
「書は、芸術である以上、人の心を動かさなければならない。
美であれ、醜であれ、人の心を動かすものでなければ、意味がない。」
と、教わった。
私自身、字を書くことが楽しくて、うれしくて、ただただ、「書きたい」と夢中で筆を運んでいた頃、
今井先生は、私の顔を見ると、
「お腹すいてないか?」
とよく尋ねられた。当時の私が、それ程、お腹がすいていそうに見えたのかどうかは、
今となっては、わからない。
きっと、そうだったのかも~(笑)
書道の話をしたとたん、今井先生の目が鋭くなる。
最近、私も受講生から、書道の話をすると目つきが変わると言われるようになった。
今井先生は、いつも、信じられない程、重いカバンを持っておられた。
私が「持ちましょうか」と手を出すと、今井先生は、いたずらっ子のような顔で
「いや、大事なもんが入ってるから、誰にも任されへん」と、おっしゃった。
ある日、いつも通りのやり取りのあと、私は、思い切って食い下がった。
「若いもんが荷物持たんのか~って、先輩方から、怒られますぅ」と。
食い下がって、ようやく得た荷物持ちの地位(笑)
しかし、この地位は、今の時代には理解されないだろうけれど、私自身の予想を遙かに上回る人気の地位で、周りからかなり嫉妬された。
今回、約20年ぶりに当時の先輩方とその話が出来た。荷物を持ちたかった人も持った経験がある人も大笑いだった。「先生も聞いて、笑ってるんちゃうか~」
みなさんと、色々な話をしながら、あの頃を思い出しながら、夢中で、作品を観て回った。
書は、あきない。
そして、書は、観ていてあきない。
私は、この道を歩んできたことを心底、幸せだと思う。
まだまだ、吸収すべきものがたっぷりなのに、気がつくと、夢中で観ている。
何もかも忘れて、眼を奪われる。
この人と、少しでも同じ時間を過ごせて、本当に幸せだったなあと、心底思った。
魅力のある書、人の理解を超えた書を「おばけのような書」と表現していた今井先生。
今回、気が付いたことが一つある。
今井先生の作品こそが、私にとっては、「おばけのような書」ですwww
会場を後にしようかなぁ~と思いつつ、無性に先生とお話がしたくなった。
それは、もう、何が何でも、話をしたい衝動。
あまりにも、突発的なことで、あふれそうになった涙をハンドタオルでごまかした。
先生あのね、本当は、今、先生に報告したいことがあるんです。
相談したいこともあるんです。
山のように尋ねたいことがあるんです。
だけど、まだ、ここで、奮闘しますね。
いつか、まだまだ先ですが、そちらへ逝ったら、お話に伺いますね。
「さぁ、どうやって、やっつけよか~」
(今井先生がタスクをこなすときにおっしゃっていた言葉)


